ネパールのプロテスタントの間では、信者（の集団）が母教会から離脱し新しい教会を創設する教会分裂が相次いで発生している。調査において分裂の実践者からよく聞かれたのは、神より新しい教会を創設するように「ダルシャン」、あるいは「ビジョン」を授かったという説明であった。しかし実践者によるこうした説明は、ネパールのプロテスタント共同体に流通する疑惑の眼差しを逃れることができない。それは、一般に「名誉の獲得」や「金儲け」といった欲深さに由来する本当の動機を隠すための口実だと理解されてしまう。だが、個別かつ具体の水準では、本当に神に授かったダルシャン、あるいはビジョンに基づいていると評価される教会分裂もないわけではない。では、その評価はどのようになされているのか。本稿は、教会分裂に対する評価の方法について検討する。その上で、そうした評価の方法によって実践者の語りを再照射することで、それが自らの語りの内容に対する無関心という「技術」に支えられていることを主張する。

くにたち人類学会

2012-05-01

Japanese(jpn)

journal article

VoR

18809375

AA12312731

くにたち人類学研究

7

30

48

Vol. 07 (May. 2012)

https://hdl.handle.net/10086/22950