診療所等経営医療法人における財務状況の経年的分析 : 主要経営類型別財務実態の変化状況

本稿では, 既存の公的調査とは異なり, 診療所等を経営する法人に焦点を当てて, 主要な経営類型別の財務実態の経年的な変化状況を分析した。その結果, 主要経営類型間の相対的な良し悪しの経年的な安定性, 各経営類型の経年的変化の相対的安定性, 各経営類型内の法人間格差の経年的な安定性のいずれについても, 財務指標や経営類型ごとに少しずつ異なることが判明した。主要経営類型間の相対的な良し悪しは, 事業採算性及び金融損益の側面と資産収益性の側面からは, 経年的にある程度安定的であり, また財務健全性の側面からは, 経年的にかなり安定的である。さらに資産の利用効率性の側面からは, 経年的に完全に安定的である。ただし各財務側面からの安定的な相対順位にある類型は, 財務側面によって異なっている。事業採算性面では老健のみ型が安定的に良い一方, 医科有床療養病床あり型が安定的に悪いが, 健全性面では医科無床単拠点附帯無型が安定的に良い一方, 歯科2拠点型が安定的に悪い。また資産効率性面では歯科のみ系3類型が安定的に良い一方, 老健を含む3類型が安定的に悪いが, 資産収益性面では医科無床多拠点型が安定的に良い一方, 医科有床療養病床あり型が安定的に悪い。また各経営類型における経年変化分は, 事業採算性面では歯科併営医科診療所は相対的変動性がかなり高い一方, 歯科3拠点以上型は安定性がかなり高い。また財務健全性面では医科診療所のみ系の各類型では安定性が高い一方, 債務超過の観点からは, いくつかの類型は変動性が高い。さらに資産効率性面では幅広い類型で安定性が高い一方, 資産収益性面では多くの類型で変動性が高いが, 医科無床多拠点型などは安定性が高い。さらに類型内格差は, 採算性面では, 医科無床多拠点型や歯科併営医科診療所などを中心に一貫して拡大, 老健併営無床診療所などでは縮小する中, 老健のみ型などでは安定的である。健全性面では, 老健併営有床診療所などを中心に一貫して拡大, 医科無床単拠点附帯無型では縮小する中, 医科有床療養病床なし附帯有型や歯科併営医科診療所などでは安定的である。資産効率性面では, 歯科3拠点以上型では拡大, 医科無床単拠点附帯無型などでは一貫して縮小する中, 老健併営有床診療所などでは安定的である。

2022年1月15日

School of Business Administration, Hitotsubashi University Business School

2022-01

日本語(jpn)

technical report（テクニカルレポート）

VoR

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Working Paper / School of Business Administration, Hitotsubashi University Business School

https://hdl.handle.net/10086/72540